歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書をもっと現代人に薦めたい理由

壮大なテーマを扱っている一方で、意外と知られていない?

私達の生活に大きな影響を及ぼしたり、心の琴線に触れたりするホットな情報やコンテンツは、いわゆるバズるという状態を通じて、瞬時に拡散するようになりました。

一方で、書籍に書かれた内容は、重要なコンテンツであったとしても、SNSでバズることは比較的少ないなと感じています。

読むのに時間がかかり、短時間でバズりにくいためなのか、あるいは読書をする人との層の違いによるものか、理由は分からないですが、

私は良書に出会った時に「この本はもっとバズられるべき」「どうしてこの本がもっと話題にならないのか」と憤りを感じることは何度もあります。

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著書は、私がが特にそう感じる本の一つです。

WIREDや東洋経済に載ったり、NHKのETV特集で授業のドキュメンタリーが放送されたりしており、

比較的有名な先生であるはずなのですが、誰でも知っている、という感じではないです。

私の周りの人に、ハラリ氏の名前やサピエンス全史を知っているかどうか、聞いて回って見たところ、YESと答えた人は1割にも満たなかったです。

私自身、去年「サピエンス全史」を本好きの友人から薦められたことで、ようやく知るようになりました。

f:id:boldmarker:20211024144625j:plain

そして、その扱うテーマの壮大さ・重大さにショックを受けました。

 

現代を生きる私達にとって重大な示唆を与えてくれる本

私はこれまで4冊の著書を読みました。人類の歴史を振り返り、過去・現在・未来を体系的にまとめています。

これらの本の特徴を非常に簡単にまとめると、人類の歴史を要約し、共通する法則を見いたし、未来に起こりうる問題を予測する、という点が挙げられます。

その要約の仕方はとても大胆なのですが、緻密な理論展開で説明しているので、とても説得力がありました。

そしてユーモラスな文章で、壮大かつ難しいテーマも、楽しく分かりやすく伝えてくれます。

f:id:boldmarker:20211024144842j:plain

特に重要な3冊は、敢えて区別するとしたら次のようなテーマで書かれています。

  • 人類の過去 サピエンス全史
  • 人類の現在 21 Lessons
  • 人類の未来 ホモ・デウス

本記事では、これら3冊に加えて、コロナ禍を踏まえて著された「緊急提言パンデミック」も紹介します。

 

それぞれの本で特に印象に残った内容

サピエンス全史

サピエンス全史は、人類の歴史を振り返った本です。

高校の教科書に書かれているような世界史に対して、最近の科学的な発見を加えて様々な視点から深堀りしています。

(高校時代にこれを読んでいたら、世界史の授業がもっと面白かっただろうに、と思わずにはいられません…)

一番面白かったのは、農耕社会によって個人個人の栄養バランスが悪化する等の変化が起き、幸福度は下がっていった、という話。

狩猟社会(日本でいう縄文時代)の人の方が、農耕社会(日本でいう弥生時代以降)よりも栄養状態・健康バランスは良かったそうです。

なぜかというと、農耕社会は総人口の増加をもたらしましたが、人々の食事は穀物中心で肉や魚が減少、つまり炭水化物中心となったためだそうです。

まずは自分の食生活を見直し、低糖質な食生活を意識しようと思うようになりました。笑

食生活についてはこちらの記事にもまとめました。

www.driven-by-curiosity.com

 

 

また、科学と資本主義の関係についても書かれており、研究者の身としては考えさせられる所がありました。

歴史上、開発したいという投資側の意図があったからこそ、その研究分野は伸びたのだそうです。

今に置き換えると、クリーンエネルギーがそれに該当するでしょうか。注目したいです。

 
21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考

テーマは、現代を生きる私達のための教訓、と言ったら分かりやすいでしょうか。

移民、戦争といった大きなテーマから、雇用、教育といった身近なテーマまで、

21のトピックについて論点を整理し、それぞれ示唆を与えています。

全部読むのは正直疲れるので、興味のあるトピックだけ読むのが読みやすいと思います。

こうあるべきだ、という著者の主張を展開するのではなく、

淡々と各トピックの本質を説明し、次に私個人がどう行動したらよいか、ということを考えさせてくれます。

「自由主義は個人の裁量が正しいとしてきたが、個人で判断できる範疇を遥かに超えている」というような文章がとても印象的でした。

 
ホモ・デウス

人類の未来をテーマに扱った一冊。

昔とは異なり、人類は自由・科学・経済に基づいて行動するようになった。その結果、効率的・合理的になった。人間至上主義(不死や至福や神性を目指す)の夢を実現しようとしているといいます。

加えて、他の生物だけでなく人間自身に対する理解が進み、人間をアルゴリズムの一種としてみなすようになっている、と指摘しています。

そしてアルゴリズムとして説明可能になったということは、AIやバイオテクノロジーといった他のアルゴリズムによって、人間を制御可能になったことも意味しています。

以前の記事で取り扱ったような行動経済学や生命科学の進歩にも、その兆候は見て取れると思います)

脳に埋め込まれた電極によって思考を制御したり、遺伝子操作によって個人個人を変えようとしたり(デザイナーベビー)するような倫理的問題に発展するという話には、かなり考えさせられました。

新しい科学技術が及ぼす影響について、近未来SFの絵空事として聞き流すのではなく、自分自身の問題として意識させられる内容です。

科学に関わっている研究者としては、読んでいて最もワクワクドキドキさせられる本でした。

 
緊急提言 パンデミック 寄稿とインタビュー

コロナ禍の真っ只中にあった2020年に発売された本。

寄稿とインタビューがまとめられています。

ハラリ氏は孤立ではなく協力し合うこと、特に途上国への医療支援が大事だと呼びかけています。

確かに、デルタ株のような変異株が途上国(デルタ株の場合はインド、ラムダ株はペルー由来とされている)で発生し、その後世界中が変異株に苦しんでいることを振り返ると、確かにその通りだなと思いました。

 

(2021年12月追記)

現在、新たな変異株の1つであるオミクロン株が確認されました。

そして、この記事で述べられているように、変異株の発生の一因として、南アフリカの低いワクチン接種率が指摘されています。

www.jiji.com

SDGsの原則である「誰一人取り残さない」がこの問題にも当てはまると思います。

誰も取り残さないことによって、結局は全体が救われることにも繋がるのではないか、と考えさせられました。