以前、研究活動のパフォーマンスを上げるための生活習慣、という記事を作成しました。
今回は食生活をテーマに、キビキビと実験やディスカッションに取り組めるような、心身ともに健康な身体つくりを考えます。
10代の頃は何を食べていても元気100%でしたが、アラサーになるとそんなことも言ってられなくなりました…。
どのような食生活を意識すべきか、私の経験談も紹介しつつ、いくつかの科学的書籍を引用しながらまとめました。
①ホモ・サピエンスにとってカップ麺はどのような存在なのか?
実験や計算に明け暮れていると、食事は手っ取り早く済ませたくなりますよね。
お湯を注ぐだけで完成するカップラーメンやカップ焼きそばは、研究生活の心強い相棒だと思います。笑
食べごたえのある麺に加え、食欲をそそるスパイスの香りや、しょっぱいスープ(あるいはソース)、油の感じがたまりません。
忙しい時には、いや、忙しくない時でも、カップ麺ばかりの生活に陥ってしまいます。
当然ながら、炭水化物・塩分・油分に栄養価が偏っているので、身体の不調を引き起こします。
私の経験では、10代の頃はカップ麺だけでも何ともなかったのですが、20代を過ぎてくると、栄養の偏りによる身体の不調を、特に感じやすくなりました。
血糖値スパイクとも呼ばれる、血糖値の急な変動によって眠くなります。また渡しの場合、ブレインフォグ(脳の霧)と呼ばれる、頭がぼーっとした感じに陥るようにもなってしまいました。
食べた1~2時間くらいは、デスクから離れるのが億劫になってしまいます。これではパフォーマンスが高いとはとても言えません…。
炭水化物と現代人の関係を考える上で、とても興味深い書籍があります。「サピエンス全史」です。
以前も本サイトで紹介した、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による、人類が歩んできた道を振り返るような名著です。
本書によると、人類は認知革命・農業革命・科学革命の3つの革命を経験してきました。その中で、約1万2000年前の農業革命では、耕作の発明によって小麦や米といった穀物を大量に栽培・収穫できるようになりました。これにより、飢餓を逃れ、人口を大きく増やせるようになったそうです。
一見すると良い話ばかりのように聞こえますが、農業革命によって、栄養状態が却って悪化したことが、人骨などの調査結果から指摘されています。
なぜなら、革命以前は狩猟を通じて肉、魚、木の実などを食べていた人類が、小麦などの穀物ばかりの食生活になり、糖質ばかりで栄養価が偏ってしまったためだそうです。
糖質は中毒性も指摘されています。食料豊かな現代の私達が未だに炭水化物を食べたくなるのは、この性質もあるのではないかと思われます。
1万年前とは状況が変わり、いまや様々な食事を選べるようになったのですから、
狩猟時代を意識(?)して様々な食材を取り入れるようにしたいですね。
(もちろん、炭水化物はエネルギー源となる大切な栄養素と言われているので、私はある程度は摂るようにはしていますよ)
②簡単に栄養バランスを取りやすくするキーアイテム:味噌汁
「そんなこと言われても、自炊なんてしたくない!」と感じるのが普通だと思います。
カップ麺を避け、肉や野菜を多く食べるようにした私でも、大抵は即席めんばかり作るようになってしまっていました。
簡単で栄養価の高い料理の一つとして、こちらの書籍では味噌汁が紹介されていました。
テレビでもよく目にする料理研究家の土井善晴さんが著した本「一汁一菜でよいという提案」です。
普通の料理(特に和食)は下ごしらえや前処理といった手順が多く、レシピ通りに作ると手間がかかり、億劫になりやすいのですが、
ハレの日(特別な日)とケの日(普段のカジュアルな日)の食事でメリハリをつけることが、家庭料理を長く続けるために大事だといいます。
やや話は脱線しますが、普段ほどほどに手を抜いておくことで、いざというとき(=ハレの日)に気合の入った料理に取り組みやすくなるのだと思い、なるほどど大いに納得しました。
本書では、ケの日には御飯と味噌汁(+焼き魚や漬物など一品)だけで十分だと説明されています。
ポイントは味噌汁の具です。レシピサイトで見る味噌汁は具がシンプルで少ないことが一般的なのですが、
一汁一菜の場合は、豚汁のように、具を多くして量や栄養価を高めています。
味噌の味付けは飽きにくいので、調味料は毎回味噌だけで十分になるのだそうです。このポイントも、毎日自炊する上ではとても魅力的。
油の使用量を減らせることも嬉しいです。
個人的に特に面白いと思ったのは、味噌汁にポーチドエッグのように卵を入れるアイデア。これによって味に重厚感が増え、また栄養価の観点でも安心だなと思いました。
ダシの選び方のコツなども紹介されており、味噌汁の奥深さを知ることができます。
味噌汁はお湯を沸かして食材を煮て、味噌を加えるだけで完成するのでかなり短時間で作ることができます。
忙しい研究生活でも、これなら自分で作れそうだなと思います。
③食べ物がどう人体に影響しているのかを知るには
過剰な糖質を避け、栄養バランスを意識した食事を摂ることで、とりあえずは健康面・体力面での心配はなくなると思います。
一方で、さらに健康な身体つくりのために、様々な食事法の理論が世間にはありますよね。
そもそも人体は食べ物をどう消化し、どの成分がどのような影響を与えているのか、私はこの「食のパラドックス」がけっこう参考になりました。
一番印象に残ったのは、「私達は、私達が食べているものが食べているものを食べている」という話です。
一文で書かれると混乱しますが、例えば私が鶏肉を食べる時、その鶏が生前に何を食べていたか、が私の身体にも影響しますよ、ということです。
今まで全く意識していなかったので、ハッとさせられました。
とりあえずスーパーで食材を選ぶ時、値段だけで決めるのはやめようと思いました。笑
また、果物に対する注意点も面白かったです。
果物は本来、秋など限られた時期にしか得られませんでした。しかし農業によって私達はいつでも果物を栽培して食べられるようになりました(「サピエンス全史」の話にも重なってきますね)。
しかし年がら年中食べるのは、人間の身体にとっては過剰で太りやすくなるのだ、と指摘しています。
さらに果物には、グルコースではなくフルクトースが多く含まれています。
フルクトースは、満腹を感じにくいので、果実をより多くの動物に食べてもらうメリットがあるのですが、食べる側にとっては太り過ぎの影響を及ぼしてしまうそうです。
果物は旬の時期だけにしよう、と著者は言っています。
食べ放題のビュッフェではバクバクとフルーツを食べていたのですが、もう少し考えようと思いました。笑
本書では、これらの内容を含めた様々な理論に基づいて、レクチン(タンパク質の一種)を避ける食事法を紹介しています。
その食事法自体がどれだけ有効なのかは私自身は判断できないですが、
とりあえず食事と健康に関する理論を端的に学ぶことができ、食べ物の選び方について参考になるのではないか、と思いました。