ガチガチの理系だけどMBAのテキストを読み始めてみた1 | マグレッタ・ジョアン著「マイケル・ポーターの競争戦略」

研究者 vs. MBA

ガチガチの理系の僕にとって、"MBA"と聞くと、なんだか遠い世界の資格(Master of Business Administrations なので正確には学歴)というような印象を受けます。

逆に、文系出身の経営者にとっては、理系の"博士号" "Ph.D."は同様に親しみのない資格であると思います。

 

こうも離れていると、MBAの大学院では一体どんなことをやっているのかと、逆に好奇心が湧いてきました。

博士号を取得するためには、実際に研究を遂行し、学術論文及び博士論文にまとめあげ、それらを学問的に認めてもらうことが必要十分条件と言ってよいでしょう。

(所属の専攻によっては、さらに講義による単位を求められる場合もありますが、普通ハードルにはならないと思います)

 

一方、MBAを取得するためには、論文はマストではないらしいです。

では一体何をやるかと言うと、マネジメント・経営・財務といった内容について、それぞれ講義・グループワーク・実習等を行う。具体的な内容は大学院によって様々だそうです。(参考:グロービス経営大学院のWebサイト

 

特徴的なのは、テキストを使って知識を学ぶことだけでなく、ディスカッション、プレゼンテーションや実習を密にこなすブートキャンプ的なプログラムにあるらしく、

博士号同様、MBAのエッセンスは独学では得られ難いようです。

 

それでも、MBAで身につける基礎的な教えがまとめられている、「古典」と呼ばれる代表的な書籍が各分野にあるらしいです。例えば↓のサイトで紹介されています。

jinji-blog.com

せめてこの書籍を学ぶことで、上述の好奇心が満たせるのではないか、

さらに期待すると、研究者と経営者の間にある考え方のギャップを埋め、相手を理解する手助けにもなるのではないか、と思うようになりました。

 

マイケル・ポーターの競争戦略 とは

最初に手にとったのは、「戦略」の分野の本である、マグレッタ・ジョアン著「エッセンシャル版 マイケル・ポーターの競争戦略」です。

これは、マイケル・ポーターによる「競争の戦略」という"古典"を、本人協力のもと読みやすくまとめ上げたという一冊。

 

ビジネスのことにはド素人な私でも、

イケア、ZARA、インテル、デル、ウォルマート、サウスウエスト航空など有名企業が具体例として紹介されているので、めちゃくちゃイメージしやすく、スラスラと読めました

 

研究者がビジネスを勉強する利点

また、この本を通じて、研究者としてこの分野を理解するメリットが見えてきたような気がします。

単純に専門用語を学べるということに加え、両者のマインドの違いを知るヒントになっていると思いました。

 

全てのニーズを満たそうとするのではなく、トレードオフを受け入れることで優位性を確保し、狙ったニーズだけを満たす(第5章)

今回読んだ本で言えば、例えばこんなことです↓

  • 研究成果は、汎用性が高い、つまり色々なニーズを満たせるものほど、高く評価される傾向にある。なので研究者は、研究成果の汎用の高さや応用先の多様さを重視して話す傾向にある。
  • 一方、(この本で理想とされている)経営者は、顧客による多様なニーズに応えることではなく、逆にターゲットとする顧客層を絞り込み、どうやってライバルに対して優位性を確保して利益につなげるか、という視点を持っている。

研究者がビジネスマンと対話をする場合には、「何をターゲットとしているか」「それによってどうライバルを出し抜けるか」という視点からも考え、話すことで、マインドの違いを少しは埋めることができるかもしれないな、と思いました。

 

ただし、下記の記事で紹介する本で指摘されているように、未来のニーズを予測することには不確定性・難しさがある点には注意したいです。

自炊にも飽きた2021年春 印象に残った本4冊 - 「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です」

 

何気なく手にとったこの一冊でも、これだけのことを考えるきっかけとなりました。

残りの6分野を学ぶのも非常に楽しみです。