前回の記事では、MBA関係の本を読み始めたと記しましたが、さすがに連続で読むのは疲れるので、全然関係ない本を読んでいました。
二項対立の構成で分かりやすい!
一般に、何かを学ぶとき、2つの事柄を比較する、いわゆる二項対立のような形式で説明されると、とても分かりやすくなります。
この本は、一貫して「鳥」と「恐竜」の特徴が互いに比較しながら書かれており、まさに二項対立によって、専門的な内容も分かりやすく伝えている、理想的な教養本であると感じました。
もし、普通の本みたいに恐竜だけを取り上げて、筋肉の付き方や前脚のはたらきを説明されても、恐竜に特段の興味があるわけではない私にはピンとこないのですが、
この本では、身近な鶏肉や鳥の翼を例にとってそれぞれを説明しているため、とてもイメージをしやすいです。
その上で、著者の専門の鳥類についても事細かく紹介されており、一冊で恐竜と鳥、両方に詳しくなれた気分になります。
また、真面目な文章と見せかけて、次から次へと時事ネタやアニメネタを仕込んでいて(加えて、やたらと美女ネタが多い)、終始笑いながら読んでしまいました。
こちらのWebマガジンに、著者自身による寄稿が掲載されています。(寄稿文でもネタ満載です)
なぜこんなに面白い文章なのか?
この著者は、これまでにいくつもの本を出版しています。
この本も、また私が以前読んだ「鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。」も、ウィットに富んだ文章、というレベルを通り越し、抱腹絶倒と呼ぶべき面白さがあります。(この文才を見習いたいです)
なぜこのような面白い本を出版しているのか気になっていたところ、↓のインタビュー記事を見つけました。
鳥の研究のポスト(就職口)を増やしたいという、真面目で切実な想いがあることに感動してしました。
「サイエンスコミュニケーション」と「面白い文章」
ところで、研究者の文章作成に関して受ける訓練は、基本的に「余計なことを書くな」という原則があります。
論文、レポート、学会の予稿、寄稿…いずれの内容であっても、基本は諸言ー実験項ー結果ー考察ー結言のパターンに則り、必要十分な文章作りをとことんやります。
なので、科学的な話題をしつつ、時事ネタやギャグを織り交ぜていく、川上氏の文章は特に衝撃を受けました。
そして、この文体のおかげで、専門的な内容を扱っているにも関わらず、全然読み疲れしないのです。
鳥類学に限らず、どのような研究分野でも、広く専門外の人に内容を知ってもらうというのは非常に重要ですよね。
私も受講したことがあるが、大学の理系の学部では、「サイエンスコミュニケーション」というような名前の講義がよくあり、専門外の人に伝える重要性やその手法などを教えています。
そのような講義でお手本の一つとして紹介すべきでは、とまで思ってしまうくらい、川上氏の本は分かりやすいです。
特にこの本は、散りばめられたギャグに加えて、最初に書いた二項対立の構成もとても上手で、傑作だと思います。
川上氏のレベルとまではいかなくても、私ももっと研究をアピールできるような話を書いていきたいなぁと、漠然と感じました。
ちなみにNHKの番組(ダーウィンが来た!とか、Nスペの秘島探検とか)にもたびたび出演されており、
NHKを観ていて、鳥に関する特集になると「お、川上先生来るかな?」とワクワクしてしまう自分がいます(そしてかなりの頻度で出演されています)。