科学論文を素早く読み終えるための3つのテクと読み方

4月になり、研究室生活がスタートしたり、あるいは専門課程で輪講の講義が始まったりする人は多いと思います。

そして研究生活や輪講で最初に直面するハードルの1つは、やはり「英語の論文を読むのは時間がかかる!」ということではないか、と感じています。

自分が大学4年生の頃、早く実験を始めたいのに、関連論文を読むのに時間がかかり始められない…という焦燥感を感じていたのをよく覚えています。

論文の読み方は人それぞれですが、同じような悩みを持っている人のため、私が実践している効率的な読み方を本記事で紹介ます。

僕が実践している論文の読み方

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よくある論文の構成と、私が読むときの順番


①Abstract(要約)で内容を知る。

論文全体でみると、数千字の英文が長々と綴られているので圧倒されやすいですよね。

しかし、一般的な科学論文では、実験や計算結果を通じて明らかにしたこと、著者が伝えたいメインの主張の数は、片手で数えられる程度にまとまっているのが普通です。(Review (総説) 論文になると、様々な研究成果を幅広く紹介しているので、話は違ってきますが)

 

長く綴られている文章は、その主張を補強するためのあくまで「脇役」のようなものである、と私は思っています。

Abstractには、そのメインの主張だけが簡潔に述べられています。

あらすじのようなものですが、書かれているのは起承転結の「起」だけではありません。「結」の内容までしっかりと含まれています。つまり完全なネタバレです。笑

 

ちなみに、論文を書く立場になると、いかにAbstractに自分の主張や新しい発見を詰め込むか、に苦労するので、Abstractの重要性はよく分かるはずです。

Abstractにはその論文のエッセンスが書かれているので、一文ずつ丁寧に読み、その論文がどういう論文なのかを把握しておきましょう。

 

場合によっては、Abstractから「期待していた内容とは違うな」と判断して、その時点で論文を読むのをやめることもあります。

 

②Conclusion(結論)でさらに詳しく読む

ここで本文の末尾に目を移します。本文の最後には、必ずConclusionの段落があります。

短いレター論文では、"Conclusion"という段落が明記されていないこともありますが、その場合でも最後の1-2段落はConclusionとして書かれていることが多いです。

Conclusionでは、Abstractと内容は似ていますが、もう少し文章が長く、内容が膨らんでいます。

Abstractでは「A = Bであることを見出した」と簡潔に書かれていますが、Conclusionでは「Xという方法を使い、A = Bを見出した。今後、CやDへの応用が考えられる」という感じで、

内容が詳しくなっていたり、応用や発展への展望が記されていたりします。

なので、Conclustionを読むことで、①のAbstractよりも、さらに詳しいところまで把握できます。

 

③Introduction(序論)で背景を確認する

Introductionの文章構成は多様ですが、基本的には

  1. 過去にどのような先行研究があったか
  2. その先行研究にはどのような問題点や応用可能性があるのか
  3. 本論文では、それに対してどのような検討(実験とか計算とか)をしたのか

という流れが多いと思います。

Introductionでは1.から3.まで述べることによって、なぜその研究を行ったかを説明しています。

 

自分自身が既に当分野に詳しかったり、あるいは論文を読む目的が単なるデータ集めであったりするのならば、

(1)ー(3)は不要な情報なので読み飛ばしても差し支えないでしょう。

またIntroductionの前半部分は、当たり障りのない一般的な内容が書かれている事が多いので、その場合は途中まで流し読みで構わないと思います。

 

 

④グラフを読む

ここでようやく、実験結果の章("Results and Discussion")の解読に進みます。

いきなり実験結果に進むのではなく、①②③を経由したのは、論文全体のストーリーを把握しておかないと、実験内容やグラフの理解も難しくなるからです。

「このグラフから何を言おうとしているのか」「なぜこの実験条件で測定(または計算)したのか」といったことを事前に把握しておかないと、結果を見ても理解できないです。

焦ってResults and Discussionばかり読んでも理解できず、結局IntroductionやAbstractまで戻って読み直すことになり、かえって時間がかかっています。(←私の苦い経験)

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また、本文を一文ずつ追っていく時間が無い場合は、グラフや表だけをチェックしていくだけで十分フォローできます。

論文では、蛇足なグラフを載せることは少なく、必要十分な内容がグラフや表に含まれているからです。 

論文の字数制限(大体の各論文誌には、守られているかどうかは別として、字数制限が指定されている)を超えたり、査読で論理的な不備を指摘されたりするのを避けるため、というのが主な理由だと思います。

 

論文の重要度や、読解にかけられる時間との兼ね合いになりますが、

①グラフ、②本文中の説明や議論、③Experimental Section(実験項や計算モデルが説明されている章)

の3箇所を行ったり来たりしながら読み、データの説明とそれに対する議論や考察を理解していくのがおすすめです。

 

ちなみに、Experimental Sectionは、普通はIntroductionとResultsの間にあるはずですが、最近は文末やSuppelemtary Informationに書かれている論文も少なくないです。 

※Suppelemtary Information:一部の論文に付属している補足資料。当論文が掲載されているWebサイトからダウンロードできます。

 余談ですが、論文を書く立場になると、どのデータを本文に載せるか、あるいはSupplementary Indormationに移すか、頭を抱えることがしばしばあります。

 

①ー④の順番を経て内容を理解していく中で、「自分の研究にはこれ以上関係ないな」と思ったらスキップしていくことで、多くの論文をできる限り効率的に把握していきます。

時間を節約するためには、論文はいかに読まずに済ませるか、ということも大事だと思います。

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pdfはコメント機能でメモ書きを

ノートに書いていくというのもアリですが、後から文章ファイルを探すのは大変です。1つのファイルにメモ書きをまとめていくのがよいと思います。

見慣れない英単語があれば、Weblio等の辞書サイトで和訳し、メモ書きしていけば、後から見直すときにスムーズになるはずです。

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Acrobat Readerのノート注釈機能が使いやすいです。

 

おわりに 読んだ論文はMenderey Desktopでリストアップ

読み終わった論文のPDFファイルは、逐次Menderey Desktopというフリーの文献管理ソフトに登録していくのがオススメです。

www.mendeley.com

PDFファイルからタイトルや著者名、さらには引用に必要な情報を読み込み、インデックス化してくれます。(時折読み込み間違いがあるので、微修正も必要ですが)

Mendeleyに登録しておくことで、後日、検索機能によって論文を見つけ出すことがカンタンになります。

 

さらに、Word上で動作するMendeley Citation pluginという拡張機能もあります。卒論を作成する時や、論文誌に投稿する時には、Referenceリストの作成をスムーズにしてくれます。

Mendeleyの使い方は、他の記事で別途紹介しようと思います。

博士論文を書く上でとても役に立ちました。

www.driven-by-curiosity.com

【論文を書く人のための参考記事】

bricolage.hateblo.jp

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