- はじめに
- 最初に主題と話の流れを決める
- 結論を決める
- 各章や各段落では、言いたいことを最初にメモる
- 1文1文は短く!
- グラフや表は、word上で編集しない
- 先に図を作るか?それとも文章を作るか?
- 引用や参考文献を入れる所には、随時メモ書きを
- 校正は2転3転するのが当たり前?
- 英文を書く際に手元においておきたい指南書 3冊
以前、集中して論文を書く場合に適した執筆スタイルや時間配分についてまとめたことがあります。
今回は別の視点から、論文やレポートそのものの書き方について紹介します。
よりスムーズかつ良質な文章を作成する上で、抑えておきたいポイントをまとめました。
また、抑えておきたいポイントは、私自身の経験と、一冊の本の両方から得られています。
その本は「理科系の作文技術」というもので、初版発行は1981年ですが、私の手元にあるのは2016年発行の81版(!)であります。文章作成の入門書として定番的な名著と言えるでしょう。
はじめに
日本語、英語問わず、ロジカルな文章を作成するのは、やり方を知らないと本当に苦痛です。
ウンウン唸っても筆は一向に進まず、結局深夜テンションでよくわからないものを書き上げて提出してしまい、レポートは微妙な評価になり、論文は指導教員から真っ赤に赤入れされて返ってくる、そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。
しかしながら、いくつかの基本事項を頭の隅に入れていることで、文章を書くのが大変スムーズになります。
また、研究室で後輩の文章を添削する立場になってからは、赤入れする側としてこれら作文技術を最初に知っておいてほしい、と思うようになりました。
そういうわけで、論文やレポートを書くときに頭の隅に入れておきたい事項をいくつかまとめました。
最初に主題と話の流れを決める
論文でいうタイトルに当たります。タイトルは、研究成果の一番のポイント、強調したい内容を凝縮しています。
なので、主題、タイトルを決めることで、文章全体の大まかな流れを、自然に決めることができます。
大まかな流れが決まれば筆も進みやすくなりますし、逆に主題と関係ない内容や反する内容は、書かなくていいということになります。本文執筆時に何を書こうか迷い、筆が止まることは減るはずです。
また、図や表を使うならば、このタイミングで使う図や表の選定と、その順番決めを行っておきましょう。
あくまで選定するだけで十分です。体裁の整った図を作るのは、この後の段階で大丈夫です。
※タイトルを最初に決めるという人と、グラフとその順番を最初に決めるという人の2通りを目にします。ここは個人の好みやケースバイケースだと思います。
結論を決める
前項とやや被りますが、論文やレポートのゴールや結論を先に決めておくと、さらに筆は進みやすくなります。
「理科系の作文技術」の本では、目標規定文という名前で紹介されていました(第2章)。
本文を書く際に、この結論に向かって書くことになります。
方向性が確定するので、話が右往左往することがなくなります。書きやすくなるのはもちろん、内容もはっきりしてわかりやすくなるはずです。
各章や各段落では、言いたいことを最初にメモる
前項までは文章全体についての内容でした。
実際に本文を書き始めると、各章や各段落の中で、文章がとりとめのない感じになってしまったり、内容のバランスが悪くなってしまうことがよくあります。
それを避けるため、各章では最初に、言いたいことをメモっておくといいと思います。
例えば、「グラフ3を示す→○○の効果を確認→△△の可能性→先行研究□□との比較」などとメモっておいて、
それをなぞるように文章を作成していくのです。
この工夫によって、途中で執筆作業を中断した場合でも、再開しやすくなるメリットもあります。
メモがないと、何を書く予定だったか忘れてしまうことがよくあるからです。
1文1文は短く!
これは有名なポイントだと思います。英語、日本語限らず、とにかく文章は短く書けとよく言われます。
小説では長い文章のスタイルが多いためか、自分で書くときもついつい似たような長さになってしまいますが、
わかりやすく論理的な文章を書く際には、意識的に短くするのは必要不可欠です。
文章を短くすべきという内容だけで、一冊の本が出ています。それぐらい重要なポイントだと言えるでしょう。
実際に書き始めると、短く書こうと意識しても、どうしても長くなってしまいます。
「ちょっと長すぎるんじゃないか」と感じながら校正を重ねるのが丁度良いと思います。
ちなみに「理科系の作文技術」でも、短い文章を書く重要性は第8.1節で説明されていました。
グラフや表は、word上で編集しない
Word上では、一応テキストボックスや図形ツールで図を編集することができます。
しかし、編集後に本文の文章を書き直していると、編集した図が本文変更に伴ってズレてしまいます。
その度に図を再編集したり位置を調節したりしていると、無駄に時間が経過してしまいます。(Wordの図の位置調整機能は、もう少し使いやすくして欲しいですよね...)
この画面を見ただけでフラストレーションを感じます笑
グラフに説明書きや凡例を追加するときは、Powerpoint上で行い、
編集後のグラフはまとめて「図として貼り付け」とすればスムーズです。
文章だけでは分かりにくいので、流れをスクショで説明します。
①Powerpoint上でグラフと、追記したいテキストなどを作成し、全選択して「コピー」する。
Powerpoint上の画面
②Word上で、画像を挿入したい箇所で右クリック→「図」を選択して貼り付ける。
Word上の画面
③貼り付けられた画像(=編集されたグラフ)のサイズを調整する。
一つの画像として貼り付けられるので、本文を編集しても位置がズレることがなくなります
表も同様に、画像として貼り付けるのがオススメです。
後から再編集する時のために、ここで使ったpptファイルは、wordファイルと同じフォルダに保存しておくと良いでしょう。
先に図を作るか?それとも文章を作るか?
ここは好みや状況によって分かれるポイントだと思います。
先に図をつくるメリットとしては、図にまとめることで言いたいことがはっきりする点です。図と目標規定文ができていれば、後から結果説明や考察について作文するのはカンタンになりはずです。
デメリットは、作業の進捗が見えにくい点が挙げられます。Wordが真っ白なまま、Powerpointの作業に打ち込んでいると、「あれ?作業進んでなくね?」と感じ、焦ってしまいます。笑
先に文章を書き上げるのは、気持ち的には楽というメリットがあります。とりあえず文章ができていれば、だいぶ進んだ感を得られます。
ただし、どのような図を作るか、ということは最初にはっきりさせておくべきです。
図をいじっていくうちに、言いたいことが変わってきてしまうと、文章を作り直さなければいけなくなるためです。
引用や参考文献を入れる所には、随時メモ書きを
論文では参考文献や引用先を書くのが必須ですが、いちいち文献リストに追加していくのは時間がかかります。また、後から文章をいじると文献番号を変更せざるを得なくなり、これもまた非常に手間がかかります。
逆に、後からまとめて参考文献を加えていくのも、漏れの原因となったり、どの文献を引用するつもりだったのか忘れてしまったりと、トラブルの原因になりやすいですよね。
この折衷案として、[]や【】のような適当な括弧を使い、
「同様の先行研究として、○○が挙げられる【△△先生の2010年の報告】。」
と文中にメモ書きしていくのが最適だと思います。学術論文ならDOI番号でもいいでしょう。
そして最後に番号を振っていけば、手間をかけずに、また引用漏れを防ぎつつ、リスト化できます。
文献管理ソフト"Mendeley Desktop"のように、word上でも動作する文献管理ソフトを使いながらでも良いのですが、
しばしば動作が重くなったり、引用番号を見てもどの文献を指しているのかわからなくなったりする欠点がああります。
私はいつも、執筆中は括弧書きで引用文献をメモし、最後にMendeleyでリスト化するようにしています。
校正は2転3転するのが当たり前?
いざ論文を書き上げ、見直しを行ったら、次は先輩や指導教員に論文を見せて、校正を加えていく段階に進みます。
この過程でしばしばストレスになるのは、なぜか校正が2転3転してしまい、「前回と修正の方向が違うじゃないか!」となってしまうことでしょう。笑
チェックする側も人間なので、その日の気分や考え方によって、校正が2転3転することがよくあります。
また、ベストなのは1回で指摘点を全て挙げきることではありますが、
1回のチェックでは見えてこない問題点や間違いというのが、どうしても隠れています。
私自身、チェックする立場になると、どうしても前回の指摘に対して真逆の修正をしてしまったり、最終段階になって新たな問題点を指摘したりということが何度もありました...。
すみません、人間なので勘弁してください...。
英文を書く際に手元においておきたい指南書 3冊
さいごに、具体的な英作文技術を身に着けたい人におすすめの3冊を紹介します。
①「理系のための英語論文執筆ガイド : ネイティブとの発想のズレはどこか?」
英作文の中でも、理系の英語論文を執筆する際に役立つテクニックや、よくある間違いが、豊富かつ分かりやすくまとめられた本。
特に、初めて論文を書く人は、これを読んでおけばずっと書きやすくなるはずです。
②The Elements of Style
英文を書く際のルールについてまとめられたベーシックな本。体裁の統一や英文法の確認にうってつけです。
③英語論文基礎表現717
「この言い回しは英語ではどう書くんだっけ?」という疑問を解消したい時に、もっとも役立つ本。手元において辞書的に使えます。電子書籍版もあり、持ち運ばなくて済みます。
最近はGoogle検索で調べることも増えましたが、信頼できるソースとして持っておきたいです。
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