SNSを利用する上で知っておきたい「エコーチェンバー現象」と「確証バイアス」を考える

先日、Twitterに「コミュニティ」という新機能が追加されました。

同じ趣味を持つ人を見つけやすく、また会話しやすくなったと言えます。

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コミュニティを使ったツイートの特徴としては、

 ① コミュニティのメンバー宛のツイートができるようになる。

 ② 返信可能な相手がコミュニティのメンバーだけになる。

が主に挙げられるようです。

しかし、私はこの機能を見て、違和感を覚えました。「②の機能って必要か?」と。

趣味が異なるフォロワーにツイートを見せないのならば、①の機能だけで十分なはずです。

そもそも、興味が無い内容のツイートにわざわざ返信(リプライ)をしたいとは思いませんし。

私の勝手な推測ですが、コミュニティ機能の目的は不快な返信(いわゆるクソリプ)を遮るのもあるのではないか、と思いました。

また、それよりも前から、ツイート時にリプライ可能な相手を制限する機能も追加されていました。

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知らない相手から不愉快な内容を返信されたり、論点のずれた意見や意味のない質問をリプライで送られたりするのは、誰だって気分が悪いですよね。

ユーザーのニーズに応え、それらを防ぐ機能を追加するのは自然なことだと思います。

 

一方で、このような機能によって、自分と異なる意見を持つ人達との意見交換が遮断され、同じ意見・価値観を持つ人達で固まってしまうのではないか、という恐れも私は感じています。

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情報を豊富に入手できるようになったが、「確証バイアス」に注意

私達は物事を判断する際、合理的かつ客観的に考えるように努力しても、どうしても非合理な判断をしてしまいます。

「バイアス」と呼ばれる様々な要因が原因と言われています。

今回の内容と大きく関連するのが、その中の一つ、確証バイアスだと考えられます。

以前私が読んだ「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」という一冊の本に、詳しく触れられていました。

この本では、人間がどんなにデータ好きだろうと、それを評価して判断を下すときに用いる価値基準は、情報や論理ではなく意欲、恐怖、希望、欲望といった感情的なものだ、と主張されています。

確証バイアスとは、自分が肩入れする意見、つまり元々賛成であった意見や、それを支持するデータばかりを取り入れるようになり、ますます自分の意見に執着してしまう傾向のことを言います。

そして確証バイアスに陥った結果、人が持つ意見は両極端になってしまうそうです。

これを読んで、「情報が豊富に入手できるようになった結果、逆に考え方が両極端になるのは何とも皮肉なことかと感じました。

 

そして、SNS等のコミュニティ*1では、似た考えの人同士が集まるため、この傾向が顕著になります。

これによって意見が極端に偏ってしまう現象が、エコーチェンバー現象と呼ばれます*2

Wikipediaのページの「関連項目」で互いにリンクされていることからも、「確証バイアス」と「エコーチェンバー現象」は互いに深く関わりのある言葉であると思います。

 

 

「気が合う人」「好きな物」としか触れ合わなくなってしまった

この説を目にして、「そんな極端なことあるわけない!」という感想を持つ人もいるかもしれませんが、

実際、TwitterなどのSNSは自分と交流する人々を自分自身で選択して"友達"や"フォロー/フォロワー"を広げていく仕組みになっています。

逆に、異なる考えを持つ人や気が合わない人に対しては、「ブロック」機能で簡単に排除し、視界から消すこともできてしまいます。

似た者同士で集まってコミュニティを形成するようになり、かつそのコミュニティは閉鎖的になりがちだ、と言えます。

 

また、人同士の交流だけでなく、購入するモノにも影響し得ます

ウェブサイトのあちこちで表示される広告の多くは、閲覧履歴等、ユーザーの過去のアクティビティに基づいて表示されるようになっていますよね。

もともと好きなモノばかりが通販サイトで表示されるようになっているのを、自分でも感じませんか。

 

例えば、Amazonで本を買う時、商品ページの下の方に関連書籍が表示されますが、

物理の本を買うと他の物理系教科書が表示され、投資の本を買うと他の投資本が表示される、一種のパーソナライズド広告ですよね。

しかしながら、これらの本はあくまで同じ分野の書籍であるため、思いがけない本に出会うようなことはめったにないです。

 

通販サイトを使うようになって以降、自分の中で読む本の分野がどんどん狭まっていくのを感じています。

知らない本や異なる価値観で書かれた本に出会う機会がぐっと減ってしまったと思います。

 

このような仕組みが普及した結果、いまのインターネットは、自分の志向(嗜好)に合った情報ばかりを提供するようになっていると感じます。

いまのインターネット環境が、個人の価値観に偏りをもたらしやすくなっていることは、「健康的で清潔で、道徳的な秩序ある社会の不自由さについて」という本でも指摘されています。

 

 グーグル検索の結果もアマゾンのおすすめ商品も、その他インターネットに現れる広告も、ユーザー自身のコミュニケーションや価値観を反映したものにパーソナライズされている。

(p.227)

インターネットは本来情報を遍く収集するために適した環境であったと思うのですが、

実際はそうではない面も多く、1ユーザーである自分の過去に引きずられてフィルタリングされる仕組みが普及しています。

この仕組みによって、何も考えずに使っていると、逆に自分自身に入ってくる情報が偏る危険性を持ってしまった、と言えるのではないでしょうか。

 

解決法:エコーチェンバーを脱するためには?

では、エコーチェンバー現象に陥らないためには、どうしたら良いのでしょうか。

私の個人的な考えですが、まずはエコーチェンバー現象が自分にも起こり得ると知ること、そして、閉じ籠もらずに様々な意見や価値観に触れること、だと思います。

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冒頭で触れたTwitterのコミュニティ機能を利用する際にも、

エコーチェンバー現象の危険性を念頭に置いて利用することがまず重要だと思います。

知っているだけで、大きな違いがあると思うからです。

 

そして次のステップとして、あえて自分と異なる意見も積極的に取り入れことで、自分の考えをより補強し深めることができるはずです。

先ほど、Amazonで本を探すことを例に挙げました。

Amazonに対し、異なる価値観と触れるために、私は図書館や本屋が適していると考えます。

 

図書館や本屋の陳列棚では、並んでいる様々な本を一緒くたに知ることができます。

そして、それらの本を何気なく眺める時に、自分の知らなかった本に出会い、買ったり借りたり(あるいは立ち読み)することで新たな視点を得る貴重な機会になっていると思います。

図書館・本屋の利点については、過去に書いたこちらの記事で詳しく説明しています。

www.driven-by-curiosity.com

 

異なる意見を向き合うことはストレスを感じますが、それに負けず、偏らない考え方を身に着けていきたいです。

 

【関連記事】

www.driven-by-curiosity.com

*1:ここでの「コミュニティ」は例の新機能ではなく、一般的な意味

*2:エコーチェンバー現象 - Wikipedia