【2020年 秋】少しずつ日常が戻っていったこの3ヶ月に読んで印象に残った本 6冊

この記事を書いているのは12月半ば。

今思い返すと、過去3ヶ月が一番落ち着いていたと思います。

個人的にも、外出頻度がコロナ前近くにまで回復していた時期でした。

 

そんな9月から11月にかけて読んだ本と印象に残った点をまとめました。外出が増えていたので、相対的に読書の頻度は少なくなっていましたが、なかなか読み応えのある本に出会えました。

 

(前回のまとめ)

bricolage.hateblo.jp

アイデアのちから

研究室で後輩のスライド資料を見ていると、なぜか変な表現だったり、回りくどい書き方をすることがよくあります。

なぜもっとシンプルに書かないのかと訊くと、「○○の事情で、必ずしもそうでない場合もあります」などと、厳密性にこだわったためだという答えが返ってくることが多いです。

相手に伝えやすくするためには、嘘を書いてはいけないですが、このように厳密性に傾きすぎるのも良くないと思います。

この本では、自分のアイデアを相手にわかりやすく伝えるための考え方がまとめられています。

 

本のタイトルからは、「アイデアにはすごい力がある」という内容の話かと思っていましたが、

そうではなく、上述したようなことにならないよう、「相手に伝わるように、アイデアを整理して、伝え方を工夫する」という内容の本でした。

 

なぜ大事なプレゼンが相手に伝わりにくいのか、

相手の記憶に焼き付くような話にするためにはどうしたらよいのか、

といったことがよくまとめられています。

 

講義や学会のプレゼンで、重要そうな話を聴いていても、退屈に感じたり、案外頭に残らなかったりしたことは多いです。

(くだらない話や、ゲームの内容なんかは記憶に定着するのに…)

逆に、ゼミや学会発表で自分の成果やアイデアを伝える場では、自分が思ったように相手に伝わらず、「自分のアイデアが過小評価されている!」と感じることも何度もありました。

 

本書によると、一旦何かを知ってしまうと、それを知らない状態を想像できなくなる「知の呪縛」と呼ばれる現象が存在するそうです。

伝えたい内容を知っている人にとっては、知らない人の立場に立つことが不可能になる、ということです。

伝え方を上達するためにあらかじめ知っておきたいことですよね。

 

説明資料を作る場合には、聴く側が知識のない状態から段階的に理解を深めるようにするのは非常に困難となります。

これが原因で、伝える側と聞く側の間に温度差が生じ、プレゼンが「失敗」してしまうことになると言えます。

 

本書では、そのような失敗を避け、アイデアを他人の印象に残らせるためのレッスンがまとめられています。

どんなに正確で網羅的なメッセージであっても、それがわかりにくくて聞き手の判断の役に立たないのであれば、何の価値もない」という一文が痛烈でした。

南方マンダラ

南方熊楠という、とんでもなくすごい学者(語彙力… いや、Wikipediaを読めば分かる通り、あまりにも常識を突き抜けた業績なので、形容すべき言葉が見つかりません)が考案した曼荼羅についての一冊。

 

私自身、そもそも曼荼羅についての前提知識が無く、仏教的な意味はこの本を読んでもよく理解できなかったです。

しかし、研究活動の普遍的かつ根本的な考え方、つまり一種の科学哲学が、この1枚のマンダラに込められているのではないかと思います。

 

用語を正確に使って説明できる自信がないため、ここに要約することは諦めてしまいました…。

簡単にまとめますと、

 各原理(物事の理)を線で表し、線同士が交点を持っている時は交点を手がかりに各原理を実証していくことができることを意味する。交点が多いほど原理を見出すのは容易になる。

 しかし、他の線と交点を持たない線は、不可知であり、推測で語られるしかない。

 

特に物理学で行われているような、理論物理と、実験による実証の関係によく当てはまると思います。

100年以上前に、科学の普遍的な構造を高度に抽象化して一枚で表した点が先端的であると感じました。

「NO(ノー)」と言える日本―新日米関係の方策―

電子立国日本の自叙伝の時代、日本国内で半導体産業が盛んだった頃の本。

 

この本が出版された時点では、私は物心がついていなかったので記憶が無いのですが、

この時代は、日本の経済成長や科学的実績が圧倒的であった一方、この本のように将来を不安視して変革を促す議論も活発に行われていたのでは、と推測します。

 

翻って、今の日本では、「中国がこんな状況で、アメリカがこんな状況で、じゃあ日本はこれからどうするの?」という問題提起はなされているものの、

「それでは日本はこういう姿を目指して変革していこう!」という提案や議論は比較的少ないと感じています。

科学技術、政治、経済を総合的に踏まえて将来像を模索したいですね。

しょぼい起業で生きていく

ニートの歩き方に近いコンセプトの本で、著者同士の対談もあります。

日常生活の支出を減らし、あわよくば収入も増やす、という考え方。

実店舗経営の話がメインでした。

自由な生き方が語られ、フルタイムで働く身にとっては魅力的に感じるエピソードが多いです。憧れます。

(一番の問題は、自分の行動に起こせるかどうか、でありますが...)

サピエンス全史

世界史で習うような人類の歴史を、最新の研究成果で得られた新たな知見で再検証していきます。

農業革命で総数は増えたが、個々の人間は不幸になった、という話が一番印象的。

農耕を始めた以降の時代よりも、狩猟をしていた時代のほうが個人は幸せだったのではないか、という指摘が新鮮でした。

そして、農業と経済を結びつけ、現代を生きる私達の幸福について問いかける。本書の構成は分かりやすく、見事だと思います。

経済に縛られず、幸福に生きるヒントになるはずです。

本書についてはこちらの記事でもまとめました。

www.driven-by-curiosity.com

ブリッツスケーリング

ブリッツは「電撃」だとか「猛撃」の意味です。

起業した後、スタートアップに成功してからスケールアップするためのノウハウが詰まっています。

メソッドだけでなく、シリコンバレーの様々な企業のエピソードが語られています。スリリングなエピソードばかりで、それを読むだけで面白いです。

 

自分には縁のなさそうな話でしたが、ワクワクする話として面白かったです。